施工管理の経験が活きる設計業務
窪田利彰が紹介する陸上競技場の設計・施工

日本体育施設が携わる工事を専門的な知識とノウハウで支える設計職は、工事現場での施工管理の経験を元に取り組む仕事です。工事を経て、現在は開発・設計の業務に従事する窪田利彰のインタビューです。

窪田 利彰 Toshiaki Kubota

技術本部 技術営業グループ チーフ
平成30年優秀施工管理者顕彰
(ジュニア建設マスター)

Advice.01窪田利彰さんについて教えてください。

Q.1入社年月日を教えてください。

A.1
平成17年(2005年)4月1日です。2024年4月で入社19年目です。

Q.2所有している資格はありますか?

A.2
「1級土木施工管理技士」と「1級造園施工管理技士」、スポーツ施設の建設に関わる資格では、一般社団法人日本運動施設建設業協会の「登録運動施設基幹技能者」や「運動施設施工技士」、公益財団法人日本スポーツ施設協会の「公認スポーツ施設管理士」を保有しています。
日本体育施設では土木施工管理士や造園施工管理士など国家資格の取得を推進しており、所定の資格に対して資格手当が支給されています。
また、学生時代から続けてきた、陸上競技の公認審判員とNTO(National Technical Official)を保有しています。
Column 01

土木施工管理技士とは

「土木施工管理技士」は、道路や鉄道、上下水道工事、港湾や河川、橋梁などの大規模な土木建設の施工管理を担う資格です。
「土木施工管理技士」は施工計画の作成、現場での各工程の管理、安全や品質、コストの管理など土木工事現場の計画と管理だけでなく、用地確保、役所手続きや書類の処理、周辺住民との調整など、幅広い範囲の業務を担当できます。

「土木施工管理技士」は国家資格である「施工管理技能士」の7つのうちの1つです。ほかに「建設機械施工技士」「建築施工管理技士」「電気工事施工管理技士」「管工事施工管理技士」「電気通信工事施工管理技士」「造園施工管理技士」があります。
特に、「1級土木施工管理技士」は現場の全体を指揮する「監理技術者」と各工程の責任を担う「主任技術者」との両方に従事することが可能です。
競技場の新設など国や自治体が発注する一定金額以上の工事の場合、安全かつ適正な施⼯を確保するために、工事現場ごとに専任の主任技術者又は監理技術者が担当します。
「1級土木施工管理技士」は、こうした大規模な工事を担当できる資格であり、試験に要求される「一般土木」「専門土木」「法規」の知識や技術がグラウンド工事でも重要です。
Column 02

造園施工管理技士とは

「造園施工管理技士」は運動施設を含めて公園や道路など公共スペース等の緑化や植栽造成における施工管理のための資格です。
施工計画をはじめ、工程や品質の管理、資材調達、安全管理などを担います。近年では、小規模な庭園造営だけでなく、ビルの屋上や壁面の緑化、都市公園の整備が増えており、再注目されている資格です。

「土木施工管理技士」同様に、国家資格「施工管理技士」のひとつで、取得のためには実務経験が必要です。造園設計等の知識や実務の蓄積が重要になります。
また、「1級造園施工管理技士」も「監理技術者」と各工程の責任を担う「主任技術者」との両方に従事できます。
「1級造園施工管理技士」は、大規模なグラウンド工事を担当できる資格であり、造園における材料や施工、施設、植物、土木工学、建築、測量・契約、施工管理の知識や技術が、グラウンド工事において活かされています。
Column 03

登録運動施設基幹技能者とは

「登録運動施設基幹技能者」は運動施設づくりの熟練の技を持った技術者であり、運動施設工事の特性をふまえた施工管理、品質管理、原価管理、安全管理等のマネジメントを担う資格です。
「登録運動施設基幹技能者」は、施工の円滑化と効率的管理を図るため工事の計画や技術上の要求、工期、工程、コスト、品質などを正しく認識し、現場における生産活動の中核的役割を担っています。
一般社団法人日本運動施設建設業協会が経験や知識、能力を多角的に診断し、運動施設工事の中核を担うにふさわしい人に認定する資格で、運動施設施工技士の資格を保有することや実務経験、職長経験等が必要です。
Column 04

運動施設施工技士とは

「運動施設施工技士」は、一般社団法人日本運動施設建設業協会が安全確実に運動施設工事を遂行する上で必要な能力について試験を行い、合格者を「運動施設施工技士」として認定する資格です。
「運動施設施工技士」が携わる運動施設工事は、多工種から成り立ち、多能工である作業員の協力により安全確実に遂行することが求められます。「運動施設施工技士」は、設計図書等に示された品質確保をはじめ、競技種目ごとに性質が異なるプレイ性能や安全性の確保、多種多様な表層材の特性への対応、随時更新される競技ルールへの対応など、質の高い運動施設を提供する役割を担います。
Column 05

公認スポーツ施設管理士とは

「公認スポーツ施設管理士」は、屋外スポーツ施設、体育館・武道館、水泳プール、音響、照明、スポーツフロアー、用器具、芝生など体育・スポーツ施設全般の維持管理に関する総合的な知識を有して、スポーツ施設の管理に務める役割を担います。公益財団法人日本スポーツ施設協会が、屋内・屋外などの体育スポーツ施設の設備を管理するための必要な知識を修得した人に認定する資格です。

Q.3趣味や特技を教えて下さい。

A.3
趣味は走ること。特技は早歩き(競歩)です。
高校では陸上部(長距離走)に所属し、その後は箱根駅伝にあこがれて、伝統校・東京農業大学に進学。箱根駅伝出場はできませんでしたが、3年から転向した競歩で日本陸上競技選手権大会に出場することができました。

Q.4これまで経験してきた工事経歴を教えてください。

A.4
入社してからの仕事の歩みを順を追ってお話しします。

入社1年目

先輩の指導のもと、初めは右も左もわからない状態で、四苦八苦しながら、日々勉強の繰り返しでした。

入社2年目

2年目以降は、先輩にサポートしていただきながら、1人で現場を任せてもらうようになり、大学グラウンドの人工芝工事がデビューとなりました。


入社3年目

先輩の指導のもと初めて陸上競技場の新設工事に従事し、陸上競技場の施工の大変さを身をもって感じました。陸上競技場は高い精度が求められ日々測量・確認の繰り返しで、1日がとても早く感じていました。
この時は世界初の投てき対応の人工芝『(スポーツターフΛ(ラムダ))』の施工に携わり、引き渡し後の競技会で、やりが人工芝に刺さった時の嬉しさは今でも鮮明に覚えています。


特設ページ

WHAT’S
投てき可能な人工芝?

普通の人工芝ではできないやり投やハンマー投など投てき対応の人工芝


ちょうどこの年に1級土木施工管理技士を取得しました。

入社4年目

毎日部活で走っていた母校の陸上競技場の全天候型への改修工事に従事しました。私にとっては思い入れのあるグラウンドに自分自身が携わることができ、誇りに思っております。陸上部の監督・コーチ、現役選手やOB・OGからも「いいグラウンドを造ってくれてありがとう」と言っていただけたことはとても嬉しかったです。

入社5年目

公共工事の陸上競技場改良工事に現場代理人・監理技術者として従事しました。このころから公共工事の現場担当をよくするようになりました。

入社9年目

Jリーグチームのホームスタジアムの天然芝張替工事を担当しました。元請会社の担当者の方は、娘さんが競歩の日本代表選手でした。競歩で繋がりもあるということで、とてもよくして頂きました。翌年は同じ競技場のトラック改修工事も担当させていただき、この年にチーフとなりました。

入社14年目以降

東京五輪に向けて、代表選手の合宿地となるテニスコート新設工事を担当。実際の試合会場となる有明の森センターコートと同じサーフェイスを施工しました。

テニスコートの工事において「コートの平坦性は、下地アスファルト舗装の仕上がり精度=サーフェイスの仕上がり」と言っても過言ではないため、下地アスファルト舗装は、とても神経を使いました。おかげで非常に良い下地アスファルト舗装を舗設することができ、サーフェイスの仕上がりも申し分ありませんでした。この年に、ジュニア建設マスターを顕彰させていただきました。
そして、仕事ではありませんが、陸上競技のNTO試験に合格し東京五輪の競技役員として委嘱されることが決まった年でもありました。
さらに、大きな出来事としては、入社当時から所属していた施工管理グループから設計を担当する技術営業グループへと異動となった年でもありました。
設計職である技術営業グループに異動して早や3年が経ちますが、工事で積み重ねてきた知識や経験が、開発や設計に活かせていることは魅力の一つです。

Q.5印象に残っている工事や案件があれば詳しく教えてください。


A.5
私の印象に残っている工事としては平成25年(入社7年目)に竣工した第三種公認競技場の大規模改修工事です。
この時は陸上競技場のスタンド工事とトラック工事が一緒に実施され、当社は全体工事の中で競技を行う部分を下請け受注し、私が現場代理人として従事しました。この競技場は当社の主力製品である「レオタンαエンボス」の第一号施工を行った施設でした。日本体育施設の歴史の1ページを築き上げている競技場を全面リニューアルする工事であるということで、非常に身の引き締まる現場でした。
工事は大変厳しい工期となり、夜間作業も伴うとても過酷な日々を過ごしたことが、印象に残っています。

Advice.02陸上競技場の設計・施工について

Q.6窪田さんの陸上競技場を設計・施工する場合のこだわりは何ですか?

A.6
①設計:使いやすい競技場にする
設計においては、使いやすい競技場にすることです。そのために、競技者視点での情報を極力、図面へ落とし込みます。また、出来映えや仕上がりがより良いものにするために、現場経験を活かして安全かつ効率的に施工できる図面にしたいと考えています。
②施工:妥協しないこと
高い施工精度が必要な陸上競技場の施工において、妥協しないことを大切にしています。そのため、現場で後輩や協力業者の人と関わる時は、測量用の測量ピン1本でも、ズレていたら直してもらうようにしています。一方で、現場がピリピリしないように、雰囲気を良くするように心がけていて、後輩を指導するときも、厳しくしないといけないところはきちんと伝え、メリハリをつけるようにしています。

Q.7設計や工事の仕事、1日のタイムテーブルは?

A.7
①設計
  • 9:00

    出社 デスクワーク

  • 12:00

    昼休憩

  • 13:00

    打合せ同行など

  • 18:00

    終業

  • 業務が忙しい時期は、1~2時間程度は残業があります。
②工事
  • 8:00

    安全朝礼 少し早めにきて準備 工事現場の施工管理

  • 12:00

    昼休憩

  • 13:00

    昼礼、翌日の打合せ、施工管理、立会など

  • 17:00

    現場完了

当日の日報記入や次の日にやることの準備などを終わらせてから退勤します。



Advice.03競技場の設計・施工の仕事について

Q.8工事や設計の仕事は、どんな人と関わって仕事をしますか?

A.8
①設計
設計の仕事は、設計事務所をはじめ施設を検討されている方からの問合せにお答えする場面もありますが、スポーツ施設特有の品質管理や性能を分かりやすく提案できるよう務めています。
②工事
工事で現場代理人として発注者の方と関わる際は、図面通りの工事を行うと共に、それ以上に、現場の状況をふまえてより良い工事が出来る提案に務めています。
工事の仕事では、複数の企業が協力して工事を行うJV(joint venture)に参画をする場合があります。JVでお世話になる他社の方々とは、本当の先輩、後輩のような関係で、信頼し合って仕事を行います。JV工事は、技術者が交流する大切な機会だと感じています。
③協力会社の方との交流
工事や設計で関わる協力会社の方に向けては、仕事のしやすさという意味でもフレンドリーに接する事を心がけています。
「人」を大切にすることを心がけています。
Column 03

日本体育施設(株)安全協力会


協力会社は、当社から発注を受けて専門工事を行う建設業者や材料メーカーなど業務を遂行するためにお世話になる方々です。当社では協力会社の方と共に安全を願い、労働災害を防止する安全協力会を運営しています。

Q.9今後の目標があれば教えてください。

A.9
プライベートな目標になりますが、2025年世界陸上の審判を務めることです。陸上競技は、23年はブダペスト(ハンガリー)での世界陸上競技選手権大会があり、24年にはパリ五輪がありますので、25年に向けて盛り上がりますね。
仕事の面では、資格取得や自己研鑽に取り組むと共に、「陸上競技と言えば、『日本体育施設』」と言って頂けるように取り組んでいきたいです。

Q.10初めてグラウンドをつくる仕事を知りました。
グラウンドをつくる仕事をするためには、どうしたらいいでしょうか。

A.10
自分は、大学時代、スポーツ関係の仕事に就くことを漠然とイメージしていたとき、スポーツの記録に挑戦するテレビ番組を見ていたら、その舞台を造っていたのが日本体育施設株式会社でした。
この仕事は、誰もが未経験。やりたい気持ちが大切です。研修制度もあるので、安心して就職活動にトライしてみてください。