ウレタン舗装材のこれまでと未来ー②「環境対応型ウレタン舗装材」誕生の背景

ウレタン先生は、スポーツ施設の土台となるウレタン舗装材について40年にわたり研究開発を行うウレタン舗装材の専門技術者です。
ウレタン先生の功績のひとつとして、2021年に化学メーカーと共同開発した、発がん性が懸念される化学物質『MOCA(モカ)』無配合の舗装材レオタンα(アルファ)エンボスSF(エス・エフ)があげられます。
この画期的な舗装材を開発した背景や経緯について、ウレタンのことをまったく知らない塾生=聞き手の学生が、ウレタン先生に素朴な疑問を投げかけながら、私たちと一緒にウレタンの世界を学んでいきます。
それでは、ウレタン先生の『公開講座』へ、ちょっとだけおじゃましてみましょう!

働く環境と『MOCA(モカ)』について<

これまでのウレタン舗装材には、化学物質『MOCA(モカ)』が含まれていたんだ。取り扱う作業をしていた製造事業場の作業員に、ぼうこうがんが認められ、『MOCA(モカ)』と健康障害リスクとの関連性が、明らかになったんだ。

塾生
舗装材に発がん性物質が入っていたとは知らなかったです!

もし、自分の家族や大切な人の健康が損なわたらと・・・考えれば、恐ろしいことだよね。
知っておくのは大事なことだよ。

塾生
家族が・・・と考えると胸が痛みます。

そうだよね。だから日本体育施設は「つかう人」はもちろんのこと、「つくる人=働く人」にも安全なウレタン舗装材の開発に着手したんだ。

塾生
環境に配慮しているなら、安心して利用できますね。


安全なウレタン舗装材とは?

ウレタン舗装は、化学反応で硬化する2液性のウレタンを使用しているよ。
主剤と硬化剤を現地で混合することで、化学反応が起きる。この硬化反応がはじまる前に、液体の状態で敷設し、仕上げて、そして硬化すると・・・強靭なウレタン舗装が出来上がるんだ!

塾生
すごい!

『MOCA(モカ)』は、硬化するときの化学反応によって、消化されて、なくなってしまう。だから、出来上がった舗装材には残留しないんだ。
施設を使うアスリートや利用者には危険性はないから安心だよ!
それから、施設を壊すときや直すときの危険性もないよ。
だけど・・・

塾生
だけど?

その一方で、「つくる人=働く人」の健康障害リスクが課題だね。有害性が懸念されているから。

塾生
なるほど・・・。

『MOCA(モカ)』とは?

塾生
そもそも、発がん性が懸念される化学物質を、舗装材に使わなければならなかった理由は?

現地で混合する時の主剤と硬化剤の硬化反応がはじまる前の液体の状態が、工事する時の作業性に大きく影響するんだ。
従来の材料、特に硬化剤に『MOCA(モカ)』が含まれていることで、主剤と硬化剤の反応速度を調整して、液体状態でいる時間を適切に確保できる。

塾生
なるほど、ウレタン舗装材を現場で施工する時の作業しやすさに関わるものなんですね。

ちなみに、私たちは、この液体の状態で使用できる時間を、可使時間ポットライフと呼んでいるよ。

塾生:ほう...

要するに、質の高い舗装材をつくるために、「『MOCA(モカ)』によって確保できた、この可使時間ポットライフをどうやって実現するか?」を私たちは研究し、製品開発に取り組んできたんだ。

塾生
なるほど、懸念される健康障害リスクを無くすことと、良さを残すことを両立することが開発の目的だったんですね!
そう言えば、『MOCA(モカ)』はウレタン舗装材のどこに使われてきたのですか?

ウレタン舗装材は3層構造になっているとさっき説明したけど、『MOCA(モカ)』は3層すべての材料に配合されていたんだよ。
私たちの研究では、3層すべての材料を環境対応型に改良したんだ。

「環境対応型ウレタン舗装材」誕生

『MOCA(モカ)』に代わる素材の誕生

塾生
『MOCA(モカ)』の代わりとなる環境にやさしい物質はどうやって探したのですか?

大手化学メーカーと共同開発することで、『MOCA(モカ)』に代わる“環境に配慮した物質”を開発できたんだよ。

塾生
それはめちゃくちゃ画期的ですね!
安全性は確かに大切なんだけど・・・
私はアスリートなので、記録向上性や走行性が満たされないと困るというか・・・。


前身製品『レオタンαエンボス』について

その通り!
さっき1991年に第3回世界陸上・・・・の話をしたと思うけど、この大会でSF材の前身である、『レオタンα(アルファ)エンボス』が採用されたんだ。

塾生
この大会、両親から聞いたことがある!海外から有名な選手が来日したって言ってました。

そうだよ。テレビ中継されて、すごく盛り上がった大会だったんだよ。

塾生
この大会で実際どんなことが起きたのですか?

この大会で次々と新しい記録が更新されたんだ。その理由に、日本体育施設が施工した舗装材が多大なる貢献をしていると話題になり、この舗装材は「マジックカーペット」と呼ばれて称賛を集めたんだ。

塾生
すごいですね!


進化した『レオタンα(アルファ)エンボスSF(エス・エフ)』

それから『レオタンα(アルファ)エンボス』は、すでに「使う人への安全」が、高く評価されていたんだ。
ホルムアルデヒドは放散等級最上位のF☆☆☆☆、そして、VOCは自主的な規制を行っていて、利用者にとっては安心して使える舗装材だったんだよ。

塾生
えっ、以前から配慮されてたんですね!

うん、でも一方で、施設をつくる人の安全という視点が、まだ十分に整っていなかった。
ここが、今回新たに開発した『レオタンα(アルファ)エンボスSF(エス・エフ)』の大きな進化なんだ。

塾生
なるほど、前の製品では「使う人」の安全はすでに考えられていて、今回は「つくる人」の安全にも取り組んだってことなんですね!

その通り。施設を使う人にも施設をつくる人(働く人)にもやさしい!、それがこのSF材の大きな特長。
高い競技性をそのままに、施設をつくる製造や施工での健康障害リスクを減らしたこの素材は、「使う人」と「つくる人」にとって必要な環境に対応した、新しいウレタン舗装材なんだ。

塾生
まさに「環境対応型」ですね!

さらに、この舗装材は特化則フリーの製品。だから、施工に関わる人の健康への配慮も万全です。

Column 01

用語解説!特化則フリー

特化則フリー:特化則は特定化学物質予防規則の略です。この規則は、労働安全衛生法に基づき、有害な特定化学物質を扱う作業において、労働者の健康被害を防ぐためのもの。


次の一歩を踏み出そう

ウレタン先生も参加する、日本陸上競技連盟主催のリレーフェスティバルで、来場者に「環境対応型ウレタン舗装材」の説明をしているよ。
これからも日本体育施設の取り組みを一人でも多くの方に知ってもらうために、イベントなどでお伝えする機会を増やしていくよ。

塾生
ウレタン先生に何度も会えるってことですね!


そうだね。これからも色々なところに出没するからね。楽しみにしていてね。
レオタンα(アルファ)エンボスSF(エス・エフ)』の施工実績は現在までに7箇所、「使いやすくてやさしい舗装材」と話題を呼び、導入が進んでいるよ。


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