現役アスリート大田和宏選手が答えます!
「走高跳」の疑問

日本体育施設のアスリートパートナーに各自の競技のスキルアップを聞く「WEB陸上競技教室」。今回は走高跳(走り高跳び)の大田和宏選手に、競技でよく聞かれる疑問に答えてもらいました。基礎的なものやトレーニング方法、メンタル面などアスリートとして普段から気をつけていることまで、幅広く答えてもらいました。
大田和宏選手のアドバイスが、走高跳び競技を目指す選手のみなさんの一助になれば幸いです。

Ⓒ高橋学

大田 和宏 Kazuhiro Ota
石川県河北郡津幡町出身。走高跳で自己最高記録2m22cmを誇り、2015年「北信越学生陸上競技対校選手権大会」で優勝を納め、2017年の日本選手権2位、2019年の国体2位などの成績を納める。

advice.01 走高跳で高く跳ぶには?

Q1.中学校で走高跳をはじめました。もっと高く跳びたいです。高く跳ぶ方法を教えて下さい。

A1.
もっと高く跳びたいのであれば、走高跳に必要なあらゆることを身につけることを考えてみてください。そのためにも自分の今の跳び方を探ってみることは有効です。「なぜ高く跳べているのか(いないのか)」を探ることは、高く跳べるきっかけが何なのかを知ることにつながります。
走高跳の理論をふまえ、助走、踏切、空中姿勢など、各パートでの自分の課題を探ってみてください。
自分が「なぜ高く跳べているのか(いないのか)」は、中学校・高校トップクラスの選手でも意外と知らないまま跳んでいる方もいるのではないでしょうか。
コーチなどがいれば、一緒に分析してもらえたりもしますが、もしコーチがいないのであれば、動画を撮ってもらい検証することも有効です。

Ⓒ高橋学

Q2.踏切(踏み切り)について。走高跳での踏切足は、左右どのように決めれば良いでしょうか?

A2.
両方試してみると良いでしょう。
どちらの方の脚が違和感なく踏切れるか両方試してみると良いと思います。
また走高跳はカーブを走るという性質があるので、踏切だけではなく、右回りか左回りかどちらが走りやすいかを指標にしても良いと思います。
一般的にはボールを蹴る脚と逆の脚(支えの脚)が踏切足であることが多いです。

Ⓒ高橋学

Q3.跳び方について。抜き足のコツはありますか?

A3.
足を抜こうとしないことです。
走高跳は“起こし回転”という現象により自動的に身体が回転しながらバーを超えていきます。そこで無理に足を抜こうとすると、逆にお尻が下がりバーに接触します。
Column 01

各学年・世代別 走高跳の記録を教えて!

男子世界記録:2m45cm
男子日本記録:2m35cm
女子世界記録:2m09cm
女子日本記録:1m96cm
日本高校記録男子:2m23cm
日本高校記録女子:1m90cm
日本中学記録男子:2m10cm
日本中学記録女子:1m87cm

advice.02 走高跳の道具について

Q4.スパイクはどんなものがいいのでしょう?どこをポイントに選んでいますか?

A4.
自分の足に合ったものを選ぶようにしましょう。
足の形は人それぞれです。足の幅が広い人、狭い人。甲が高い人、低い人…スパイクを履いた時に爪先が上がっている方が楽、逆にフラットで下がっている方が自然でしっくりくる。等という人もいるでしょう。
現在、様々なスポーツメーカーが走高跳のスパイクを出しています。
足に合わせるのはもちろんのこと、メーカーによってアッパーの素材やソールの硬さ等、何が自分によって最大のパフォーマンスを発揮できるのかを最優先に選ぶことが大切です。
一度専門店に足を運び、知識のある店員さんと相談して決めることをオススメします。

Ⓒ高橋学

advice.03走高跳のさまざまな疑問

Q5.走高跳向きの体型などはありますか?

A5.
基本的には長身で細身な人が適していると言われています。
走高跳は高さを競う競技なので、身長の高さはかなり重要であると言えます。
また重力に逆らう競技とも言い換えることができるので、重すぎる体重も不利に働くこともあります。
しかし、これは絶対ではありません。
実際に、低身長でも世界一になった選手や、筋骨隆々なパワータイプの世界王者も存在します。

Ⓒ高橋学

何が「自分にとって最適なのか」を自分で探っていくことが、私は大切だと思います。

Ⓒ高橋学

Q6.筋肉トレーニング以外にどんなことをしていますか?心がけていますか?

A6.
走トレーニング、ジャンプトレーニング、動き作りドリル等を行っています。
ジャンプトレーニングや競技特性に対応した動き作りのドリルは言わずもがな走高跳に必要であることは想像に容易いと思いますが、実は走りの部分が重要です。
走高跳は他の種目と比べて助走速度はそこまで高くないため、足が遅くても良いと思われることもありますが、それは違います。何故なら、助走速度は上昇速度に直結し、上昇速度は高さに直結するためです。
ただし、走高跳選手の場合は普段の練習で“足を速くしよう”と思わなくても大丈夫です。
代わりに、“良い走りをしよう”と心がけてください。結果的に足が速くなればOKです。

@Takashi OKUI

Column 02

順位の決め方を教えて!

同じ高さになった場合、その高さでの試技の回数が少ない方の順位が上となります。それも同じ場合は、失敗した試技の少ない方の順位が上となります。

advice.04食事面

Q7.食事面で、どんなことに気をつけていますか?

A7.
バランスよく食べることを心がけています。
私の場合、特に何かを禁止したり、逆に何かを沢山摂取したり、ということは行っていませんが、毎回の食事の際にはしっかりと炭水化物(米・麺)、タンパク質(肉・魚・豆)、ビタミンや食物繊維(野菜・果物)を揃えるようにしています。
肉は脂質のないものを選ぶのですが、やはり安くて脂質の少ない鶏胸肉などは重宝します。

食事によって起こる身体の変化というものは個人差がありますから、アスリートの食事などを参考に、自分に合った食事を見つけていくことが大切になります。自分の体質に合わせて、無理のない範囲で食材などを自制する必要もあるかもしれません。

私の場合、太りにくい体質です。甘いものは全般に好きですが、無理に控えませんし、かといって過剰に採ったりもしません。
自分の中で、摂取量と消費量がバランスが取れる状態を目指すことが大切です。

advice.05試合以外の過ごし方・練習について

Q8.練習では毎日跳んでいますか?

A8.
跳躍練習は週に1~2回程度です。
競技力が高くなるにつれ、1回ごとの跳躍の負荷も高くなっていきます。
踏切時、身体に掛かる負荷は凡そ体重の10倍とも言われ、トップクラスになると1tにもなります。
そんな多大な負荷が掛かるトレーニングを毎日続けることは疲労や怪我の関係から現実的ではありません。負荷とリカバリーのバランスを調整する必要があるでしょう。
走高跳上達のための練習は必ずしも跳ぶことだけに限りません。体力面、筋力面からのアプローチを考え、別の練習に取り組むことも必要です。
ただし技術習得の観点から、そこまで力の大きくない小学生や中学生の若い世代であれば、もっと跳躍練習の頻度を増やしても良いかもしれません。

@Takashi OKUI