芝草管理技術者の石井幹生が紹介する
サッカー場の芝生管理の仕事

技術職の中でも芝生管理の仕事は、芝生管理に特化し、スタジアムの芝生や校庭緑化に取り組む仕事です。競技施設の天然芝を管理する専門職として欧米では『グラウンズマン(またはグラウンドキーパー/グリーンキーパー)』の呼称もあり、特に天然芝を用いるプロサッカーやゴルフでは競技を支える重要な仕事とされています。

今回はサッカー場の芝生管理について、フクダ電子アリーナのある千葉市蘇我スポーツ公園の指定管理者である『SSP UNITED』(※)の構成員として芝生管理を行う石井幹生が就職活動中の方からのよくある質問について答えながら仕事内容を紹介します。

※SSP UNITEDとは、蘇我スポーツ公園スポーツ施設を管理運営する(株)千葉マリンスタジアム・ジェフユナイテッド(株)・日本メックス(株)・日本体育施設(株)による共同事業体です


石井 幹生 Mikio Ishii
関東支店 技術管理チーム
(関東ST)チームリーダー
芝草管理技術者

INDEX

Advice.01石井幹生さんについて教えて!

Q.1現在、入社何年目ですか?

A.1
もともとアパレルのアウトドア部門やアウトドアの商社で働いていたのですが、芝生管理に興味を持って転職しました。当社の仕事は公園管理を行う現場でのパート・アルバイトからスタートでしたが、1年後に社員になりました。バイト時代も含めると社歴は15年位です。

Q.2所有している資格はありますか?

A.2
芝草管理技術者1級などを所有しています。
Column 01

芝草管理技術者とは?

芝草管理技術者は、サッカー場や野球場、ゴルフ場など天然芝のスポーツ施設や、公園などの芝生を適正に維持・管理する専門技術者資格のことです。芝生について総合的に知識や技術の向上を図り、環境の保全にも配慮が必要です。
特定非営利活動法人 日本芝研究開発機構が開催している資格試験で、日本ゴルフ協会(JGA)公認(平成19年8月1日から)の制度となり、近年ではスポーツの振興に必要と認められ、スポーツ庁の後援(「第15回2級資格認定事業」等)も得ています。
資格区分は、1級・2級・3級。資格を取得には、各級の研修会を受講し、試験に合格することが必要です。有効期限は認定日から3年間で、更新(3年または1年)することで継続します。
当社では、土木施工管理士や造園施工管理士など国家資格取得が推進されており、所定の資格取得した場合には、資格手当が支給され、受験費用も合格した場合は実費が支給されます。

Q.3趣味や特技を教えて下さい。

A.3
音楽、映画、写真、読書などですね。
休日は、夫婦共にフレックスな働き方なので、妻と休日の予定を合わせて、映画などに行って過ごすことが多いです。
グラウンズマンの仕事は、リーグ中は土日・祝日の休みは限られるので、平日休みにしかできないことを楽しんでいます。
ちょうどこの間の休みは、妻と音楽ライブに行きました。
それから、幼稚園のころからサッカーをやっていて、サッカーなどの球技全般が趣味です。

Q.4グラウンズマンとはなんですか?

A.4
欧州では、サッカー場の芝生を管理する人のことを『グラウンズマン』と読んでいます。
私は、イギリスのクラブチームで働くグラウンズマンという存在を知り、感銘を受けました。今回の質問は、敬意を込めて『グラウンズマン』として質問にお答えします!
『グラウンズマン』という呼び方だけでなく芝生管理の仕事は、ゴルフ場の芝生管理をルーツに『グリーンキーパー』と呼ばれていたり、アメリカでは『グランドキーパー』と呼ばれていたり、呼び方は様々。職業としての区切りがあるわけではないですが、それぞれの立場で真剣に芝生に向き合っています。

Q.5石井さんがこれまで経験してきた案件の経歴を教えてください。

A.5
もともと、サッカーをずっとやっていて、高校時代に国立西が丘競技場(味の素フィールド西が丘)に立った時、「芝生のピッチって、すごい。」と感激した経験から、芝生に興味がありました。
当社では、まず1年弱の期間、アルバイトとして公園管理の仕事から始めました。スポーツターフの管理をすることを決意し、スポーツターフ管理のグループリーダーの下について最初に携わったのは、武蔵野の森競技場とJリーグチームの練習場、現在も管理を行っている相模原ギオンスタジアムでした。その後は、町田市野津田公園の町田GIONスタジアムなど地域リーグ、JFL、Jリーグと各カテゴリーのピッチ管理(芝生管理)をおこなってきました。2020年に蘇我スポーツ公園の指定管理者構成員となってからは、関東支店の技術管理ST(スポーツターフ)として、現在の『フクダ電子アリーナ』の芝生管理を担当。
当社では、『フクダ電子アリーナ』に隣接するジェフユナイテッド市原・千葉の練習場『ユナイテッドパーク』の芝生管理も行っており、こちらは、同僚がグラウンズマンを務めていますので、ピッチに係る情報共有や連携も欠かせません。そして、スポーツターフグループリーダー(※)の厳しい目にも支えられています。
加えて、芝生管理の立場から、芝生工事に関連する技術支援や工法開発にも携わってきました。

 ※:当社では、芝生管理の職員は業務を所管する支店に所属します。すべての支店の芝生管理事業に横串をさす役割を持ったスポーツターフグループリーダーが、経営企画本部の立場から厳しくも暖かくサポートしています。

Q.6印象に残っている仕事は?

A.6
現在担当しているなかでは『フクダ電子アリーナ』が最も難しいですね。芝生の生育に特色があって、そのあたりを把握し、管理していくのにそれなりの手間がかかります。その分やりがいはあるし、これまで経験した仕事ではなく、現在進行形の仕事ではありますが最も印象深いです。

他にも、ハイブリッド芝や既存芝を活用するリニューアル工法の仕事も印象に残っています。
ハイブリッド芝システムが国内で注目され始めた2016年には、国内初のフルピッチの施工、芝生管理に携わることができました。導入に向けてヨーロッパのハイブリッド芝を視察に行った時に見た事はとても印象にに残っています。初導入に携わったことをきっかけに、ハイブリッド芝に係る情報収集を続けていますが、欧州と日本の芝草は違いますので、日本の特徴に適したハイブリッド芝をいつも考えています。
-視察で思い出に残っている写真-
さらに、当社は施工部門もありますので、改修の技術支援にも携わってきました。
町田GIONスタジアムの芝生管理を担当していた2013年には、既存芝を活用したスポーツターフのリニューアル工法を開発し、工事後の初期養生管理に取り組みました。この工事は、陸上競技場のインフィールドを切り下げる時に、芝生をカーペット状に切り取り、外側のウレタン舗装の上で保温しながら状態を維持し、インフィールドの整地が完了後その芝生を張り戻すもの。ここで行った既存芝を活用する工法によってローコスト、産業廃棄物低減を実現しました。実現に向けては、既存芝の舗装断面構成など状態を正しく分析した上での計画を立て、工事とその前後の管理を行いました。特に工事後の品質改善は苦労しましたが、その甲斐あって、この工法は翌年の第30回都市公園等コンクールの材料・工法・施設部門において、国土交通大臣賞を受賞することができました。

都市公園コンクール 表彰式会場にて
右は奥会長、左が石井

Advice.02サッカー場の天然芝と人工芝について

Q.7サッカー場の天然芝と人工芝は、どう違うのですか?

A.7
一般的には、①天候の影響②ボールの転がり方や弾み方③選手(利用者)への負担などが挙げられます。①はメンテナンス性や常緑性を考えると人工芝が有利、②は平坦性が整う人工芝が有利な反面、弾みが大きくなるため、一長一短と言えるようです。③については下地が砂でクッション性の良い天然芝が有利とされています。
グラウンズマンの視点で考えると、選手の安全性においては、人工芝の品質向上は目を見張るものがありますが、天然芝は、クッション性など天然の芝生だけが兼ね備えた魅力があります。
選手への負担においては、天然芝はある意味で、強い強度が発現した際に壊れてくれますが、人工芝は壊れないものがある。負荷が選手へ全てかかり、怪我の発生リスクにつながります。
ヨーロッパで主流となっている天然芝と人工芝のミックス(ハイブリッド芝)も強度という点では優れています。
天然芝はハイメンテナンスをおこなうことで、高い品質維持に繋げていますが、人工芝はローメンテナンスでOK。
平坦性、ボールの転がりは人工芝も優れていますが、技術がある選手であれば、多少の凹凸感があっても、優れたプレイをおこないます。
最近の選手は人工芝に慣れているため、天然芝でのプレイに違和感を覚えるケースもあるようです。
天然芝では、ボールを強く蹴らないとパススピードが上がらないなど、難しさは出てくるかと思いますので、フィジカルの強化はどうしても必要になってくると思います。
選手が何を求めるかで異なると感じており、ニーズをしっかりと把握した提案を心がけています。
Column 02

『ロングパイル人工芝』はスポーツ専用の芝生

一般の家庭やゴルフ場のティーグラウンドなどで目にする人工芝は『ショートパイル人工芝』と呼ばれます。ショートパイル人工芝は、サッカーをするような施設では使用されません。
そこで、天然芝の感触に近づけ、スポーツ用の人工芝として生み出されたのが生み出されたのが『ロングパイル人工芝』です。ロングパイル人工芝はスポーツ専用の人工芝といえます。公益財団法人日本サッカー協会(JFA)の設けるロングパイル人工芝ピッチ公認制度もあり、サッカーのプロユースの練習場でもロングパイル人工芝が使用されていますが、特に、Jリーグスタジアムにおいては、天然芝が愛されています。

Q.8プロサッカーの競技場は天然芝じゃないとダメですか?

A.8
Jリーグスタジアム基準の中では、『ピッチの芝生は、天然芝又はJリーグが認めたハイブリッド芝*であること』と規定されています。

*Jリーグが認めたハイブリッド芝:ピッチ全体が天然芝と5%以下の人工芝とを組み合わせたもので、導入前に、ピッチ外でハイブリッド芝の実証実験を実施することと、実証実験の結果をもとに、導入に関して理事会の承認を得たものとなります。

これは、選手への負担を考慮し、天然芝を優先しているのではないでしょうか。

Q.9サッカー場に適した芝生の種類はありますか?

A.9
サッカー場の芝生、なかでも天然芝には使用頻度にある程度耐えられる強度と密度などが求められます。

暖地型芝草」なら『ティフトン419』や『ティフグラウンド』などがあるバミューダグラス。サッカーW杯カタール大会でも、多くのスタジアムで採用されていた『シーショアパスパラム』も注目です。

ティフトンのターフ

寒地型芝草」なら『ペレニアルライグラス』や『ケンタッキーブルーグラス』が挙げられますが、スタジアムがある地域、気候変動を考慮すると一概には言えなくなりつつあります。日本古来の野芝や高麗芝といった芝草もアメリカで品種改良が進んでおり、今後の発展に期待が持てるかもしれません。

ケンタッキーブルーグラスのターフ

また、ウィンターオーバーシーディングを行う場合は、どちらを主体にするかによって組み合わせも変わってきます。

Q.10サッカー場に適した天然芝生の整備方法はどんな方法がありますか?

A.10
機械撒き芝(まき芝)工法」「播種工法」「張り芝工法」などがあります。
永続的な考え方で言ったら苗植えから育成する手法や、小判での張り芝工法に尽きると思います。
新設工事の時には、専門機械を使った機械撒き芝工法が用いられます。

機械まき芝工法

ロール芝を用いた張り芝工法

Q.11サッカー場に適した芝生の張り方は、ありますか?

A.11
張り芝工法は、あらかじめ圃場(ほじょう)で生育した芝生を切り出して、サッカー場に搬入し、並べて置いていく手法です。
切り出し方は、平板状に切られたもの「ソッド芝」、ソッドより長くマット状に切られた「ロール芝」があります。さらに、ロール芝より面幅の広い「ビッグロール芝」もあります。
ビッグロールの施工は、工期が短く、養生期間もほぼ必要としない点では優れています。ただし、違う土壌の持ち込みや根の下ろし方がビッグロールは大きく異なるため、フィールドの土壌とのマッチング具合を考慮することが重要です。
また、ハイブリッド芝においてビッグロール工法で実施する際は、人工芝の基布によって環境が分断されることを避け、同じ舗装構成で整備することが重要となります。
Column 02

予備の芝生を育てる圃場(ほ場)

私たちは、予備の芝生を育てる場所を「圃場(ほじょう)」と呼んでいます。圃場には、芝生管理者がピッチの予備の芝生をピッチと同じ環境で育てる圃場と、天然芝の生産者が生産・管理する圃場があり、後者は「ナーセリー(nursery)」とも呼ばれています。

Q.12ハイブリッド芝ってどんな芝生ですか?

A.12
ハイブリッド芝』は『強化型天然芝』とも呼ばれ、天然芝をベースに一定割合の人工芝や人工繊維を混ぜて敷設した芝のことを指します。もともと天然芝の強度を補うためにヨーロッパで生まれました。
打ち込みのスティッチ式と、ロール状のカーペット式、土壌にマイクロファイバーとコルクを混ぜ込み、根に絡ませて強度を発現する人工芝繊維補強式があります。
当社製品『エクストラグラス』は、カーペットタイプのハイブリッド芝で、強度に加えて、平坦性の維持できる点が魅力です。

Q.13ハイブリッド芝は、滑るって本当ですか?

A.13
確かに、ハイブリッド芝の使用されているスタジアムで行われた海外の試合でもひっかかったり、滑るような光景が見られました。ハイブリッド芝は強度がある反面、天然芝に比べると怪我人が発生しやすい状況が続いています。
ただ、ハイブリッド芝が滑りやすいとは一概には言えず、天然芝と人工芝のバランスをいかに保つかが鍵となると考えます。
専門的な話になりますが、Jリーグが認めるハイブリッド芝は人工芝の割合は5%未満とされていますが、人工芝はあくまでも補強材の役割を担います。人工芝が表面に露出すると滑りやすくなったり、補強されているためよく引っかります。
一方、ハイブリッド芝は、フィールドが凸凹になったり、剝がれたりすることを、補強材によって防ぐものですので、天然芝の面が肥大化し補強材が完全に埋まってしまうと、効果が失われます。
天然芝と人工芝(補強材)のバランスが重要です。
私がハイブリッド芝の施工や管理に携わった際は、天然芝と補強材をいかに共存させるかを考えて取り組んでいました。確かに、天然芝が成長すればクッション性が得られますが、安定的に良い状態を保つためには、ハイブリッド芝としての利点を活かし、天然芝の面を造り急がないことが重要でした。
国内でハイブリッド芝のピッチが整備されはじめてから5年以上が経ち、最近では表面の天然芝を剥ぎ、補強材の面を整正し、新たに種を撒くリノベーション工法がハイブリッド芝の定期更新として実施されています。

Advice.03サッカー場をとりまく施設
(スタジアムからライン、ゴール)について

Q.14サッカーのスタジアムはなぜドームのように屋根がないのですか?

A.14
天然芝の育成に大きな影響が及ぶためです。
オープンエアで、天候の影響を受けておこなう競技という文化的な背景もフィールド部分は屋根で覆わない理由としてあるのではないでしょうか。
特にバミューダグラスは多くの日照量を必要とするため、日陰が多いスタジアムだと本来の生育形態が望みづらいです。
グローライト(補光機)の登場や、新たな肥培管理の手法により、違ったアプローチも出てきてはいますが、引き続きグラウンズマンの大きな課題です。
気温の推移にもよりますが、光合成量が少ない寒地型芝草ならグローライトでカバーする管理手法がヨーロッパの方では確立されつつあります。時代は多目的利用でアリーナの建設ラッシュが起きていますが、フットボールやラグビーといった競技が今後屋内でおこなわれるようになるかは未知数。可能性に満ちています。
Column 03

サッカー場にも屋根付きの施設が増えるかもしれない理由

天然芝を基本とするサッカー場において、芝生の育成の方法と日光の関係性から、陽光を遮るドームや開閉式を利用した屋根付きの競技場は稀だったと言えます。

とは言え、日本においても神戸の『ウイングスタジアム』が屋根付き、大分の『レゾナックドーム大分』は開閉式ドームが採用されています。『札幌ドーム』では移動式ピッチ「ホヴァリングサッカーステージ」が用いられています。屋外の「オープンアリーナ」と呼ばれるスペースに試合のない場合は天然芝のピッチをそのまま移動させ、日光を当て芝生を育成しています。
スポーツだけでなく多様な利用を行う観点では、欧州のマルチスタジアムで行われている芝生管理手法をはじめ、地温コントロール設備などの進化により、今後は屋根付きスタジアムが増えてくるかもしれません。
ぜひ、
当社の強みである『グラウンズマン』と『スポーツエンジニア』の連携によって、実現して参りたいと考えています。

Q.15サッカー、ラグビー、アメフト、コートは全て同じ大きさですか?

A.15
サイズはそれぞれ異なります。これらの大きさの違いは、グラウンズマンとして大切な知識です。
サッカーは、FIFA(国際サッカー連盟)、JFA(日本サッカー協会)によって105m×68mという規定はあるものの、最小、最大のサイズも示されています。
ラグビーは、国際試合が100m×70mとされていますが、Jリーグが行われているスタジアムではゴールラインの幅は68となっている場合が多いです。インゴールも22m~6mと様々です。
アメフトは、100ヤード(約91m)×53ヤード1フィート(約49m)です。
それぞれ専用の球技場もありますが、同じフィールド上でラインを引き直し、ゴールポストなどの必要な施設を設置して利用する場合もあります。

Q.16サッカーのラインを引くときのコツは?プロは、特別な道具を使って引きますか?

A.16
『フクダ電子アリーナ』でおこなっている方法は、人力でロープを張って、スプレーノズルのラインカーで描いてます。
現在はGPSを用いたり基準点をからほぼ全自動でラインを引けるロボットもあります。ロボットタイプはまだまだ改善すべき点が多いため、プロが使用するスタジアムでの運用はされていませんが、改良が進んでいますので、注目しています。

Q.17サッカーゴールは、どのタイミングで建てられているの?

A.17
『フクダ電子アリーナ』では、基本的には試合の当日に建てています。試合当日のイベント利用等で前日におこなうケースもあります。
サッカーゴールは転倒を防ぐために、砂袋等の重しや専用の杭で固定する必要もあります。大会主催者によって規定の方法があり、JFAにおいてもサッカーゴールの固定方法が、スタジアム標準『サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン』で決められていて、規定に従って設置することになります。

ラグビーゴールは、W杯を契機に、大きなゴールが増えてきました。高さ17mとなると、ウインチ式のタイプやバギーを使って立ち上げるタイプがありますが、いずれも建て込み時の安全管理が重要です。

Advice.04サッカー場の芝生管理

Q.18石井さんの目指しているグラウンドは?

A.18
平坦でボールがスムーズに転がり、適度なクッション性を有しつつ強度があるグラウンドを目指しています。

Q.19サッカー場の芝生は、どうして「しま模様」になっているのですか?

A.19
FIFAの規定にはありますが、Jリーグ等においては厳密な決まりはありません。
ただ、ゼブラ(しま模様)が用いられているのは、プレーヤーの空間認識や、アシスタントレフリーのジャッジの際などに目安になるからです。
ゼブラ状に芝生がなっているのは、芝生を刈りこむ時の方向を変えることで、芝生が倒れる向きが変わります。それを遠くから見ると模様に見えます。
とはいえ、ゼブラの模様のパターンには各社・各施設ごとに特徴があります。われわれ業界の立場でみると、ゼブラのパターンを見て、「どこのスタジアムか、管理会社か」が分かるケースもあるくらいです。

Q.20サッカー場の芝生はいつも綺麗な緑色ですが、冬は枯れないのでしょうか?

A.20
ヨーロッパなど寒地型芝草を用いている箇所は常緑です。日本は、四季がはっきりしており、気温の変化が激しいのが特徴です。暖地型芝草は平均気温が15度以下になると育成をやめて休眠しはじめ、12度以下で完全に休眠しますが、休眠すると枯れたように見えます。日本のように芝生が休眠する(枯れたように見える)地域では、ウィンターオーバーシーディングといった手法を使い常緑のピッチを形成しています。

Q.21私の学校は、もともと芝生だったサッカーグラウンドですが、すっかり土のグラウンドになってしまいでこぼこです。芝生の種を買ってきて、練習後にまいたら育つのでしょうか?

A.21
種を撒いて、適切な潅水作業(水やり)をおこなえば種は確実に発芽します。問題になるのはその後の初期養生管理です。過度なストレスを与えず、適切な養生管理を行えば、再生は可能です。実際に、芝生の育成には知識が必要で、利用者のみなさんが育成するにはハードルが高いと言えますが、グラウンズマンのアドバイスを受けながら、選手たちがピッチ管理を行っている大学もあります。

Advice.05サッカー場の芝生管理の仕事

Q.22サッカー場の芝生管理ってどんな仕事ですか?

A.22
クラブチームがピッチに求めることを理解して、それを追求する仕事です。
私は当社の職員として業務に当たっていますが、やはりチームの追求するサーフェイスを実現したいと考えていますし、チームに評価されることは大きなやりがいです。
例えば、ヨーロッパのグラウンズマンは職人的なスキルはもちろん、芝生の状態に応じて、利用調整を施設管理者に働きかけたり、スタジアムを所有する行政に改修提案を働きかけたりするトータルマネジメントも担います。
枠組みは違いますが、当社には工事や公園管理の部門がありますので、連携するときこそ、資質が問われると考え、トータルマネジメントの視点を持つように心がけています。

Q.23サッカー場の芝生管理の仕事はどんな人が働いていますか?
サッカー経験者じゃないとだめですか?

A.23
スタジアムのグラウンズマンにもいろいろなバックボーンの人がいます。私のようにサッカーをずっとやっていて自然に興味を持った人もいますし、サッカーは見る専門で他の競技をやっていた人、サッカーより芝生に興味をもって仕事を始めた人。だから、試合の時は絶対に働きたい人と、試合のある土日は休んで他の日に働きたい人、それぞれです。いずれにしてもフレックスな働き方になるので、「サッカー」や「芝生」を大切に考えられることが仕事をする上で共通したモチベーションになっています。

Q.24芝生管理の仕事は、どんな人と関りながら仕事をしますか?

A.24
クラブチーム、市役所の担当者、施設管理者、県サッカー協会、イベント運営会社などが挙げられます。
Jリーグの試合が年間〇試合行われますので、クラブチームを重要な顧客と位置図けて、ニーズを汲み取れるようにしています。
また、発注者である市役所の担当者と接するときは、芝生の状態と利用への影響をわかりやすくお伝えできるよう心がけています。
さらに、フクダ電子アリーナでは、サッカー場の試合はもちろんイベントも開催されますし、プロだけでなく学生や地域のイベントも行われいます。幅広い利用に対応することになりますので、それぞれのニーズを理解して、対応した施設を提供します。
加えて、フクダ電子アリーナの仕事は、指定管理者構成員として携わっていますので、代表企業の株式会社千葉マリンスタジアムをはじめ、ジェフユナイテッド(株)、日本メックス(株)の職員の方と連携しながら仕事を行っています。多様性のある組織ではお互いの価値観を共有し、同じ目標に向かっていくことが重要ですね。

Q.25現在の1日のスケジュール、一年のスケジュールは?

A.25
普段は8時に出勤して、日中は作業、その後パソコン業務といった流れです。遅くても、18時には退社します。
Jリーグのナイトゲームや音楽フェスがある時は出勤時間をずらすなどして調整しています。
例えば、ナイトゲームの日は15時~22時で、途中で夕食休憩1時間をとります。
音楽フェスの対応の時は、朝5時に集合という日もあります。
年間では、Jリーグは2月~11月が繁忙期となります。『フクダ電子アリーナ』は、Jリーグが落ちついた時期に、全国高校サッカー選手権が開催されるため、サッカー三昧の充実した雰囲気が現場に生まれています。

Q.26サッカー場の芝生を管理する仕事をしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?

A.26
農学を学んでこの世界に来る人も多いですが、私のように異業種から転職するケースもあります。天然芝の上でおこなわれるスポーツが好きであれば、本人のやる気次第でチャンスは大いにある仕事だと思います。

ジェフユナイテッド市原・千葉の運営する【UNITED! ~ひとつになって、越えてゆこう。~ 特設サイト】の「フクアリのピッチから」では、石井が芝生管理人として情報発信中。